のれんを下ろす

美味しく作って安く売る。江戸時代の創業より店主への遺言を引き継ぎ、変わらぬ味を守り続けてきたへんばや商店。実は過去に一度だけ、苦渋の決断により「のれんを下ろしたこと」がありました。それは昭和19年7代目当主の時代です。
戦時中のモノ不足時期に行われた統制経済下では、資材を手に入れることが大変困難でした。へんばや商店も公的には禁止された流通経路（闇市）で、へんば餅の材料を集めざるを得ない状況に追い込まれます。しかし、ヤミ資材を使用してまで商売をすることにどうしても抵抗のあった当主は、とても悩んだ末、長く続いたへんばや商店の「のれんを下ろす」決断をしました。

その後、世間が落ち着きを取り戻し、世の中の市場が安定し始めると「もう一度へんば餅が食べたい」と有難いお声を沢山いただくようになり、ご愛顧くださるお客様に背中を押されながら、昭和30年、商いを復活させました。

先日、30年ぶりに本店にご来店いただいたお客様から
「風景も味も当時のままで、涙が出るほど嬉しかった。ずっと変えずにいてくれてありがとう」
とお言葉をいただきました。へんばや商店も皆様の記憶の一部となり、ずっと大切に思ってくださる方々がいることを再確認させていただきました。
これからも、変わらないこと、変えないことの尊さを大切にしながら、創業からの味を守り、歴史と伝統を保ち続けたいと思います。
伊勢にお越しの際には、是非へんばや商店へお立ち寄りいただき、昔から変わらない素朴な田舎の餅をご賞味ください。
香りよい伊勢茶のご用意と丁寧なおもてなしで、従業員一同皆様のお越しをお待ちしております。